SACRA 4G-50-CL を 貸していただきました〜インプレ〜
積極的なSNSでの活動もあり、新興メーカーとしては異例の速さで知名度を高めたSACRAさん。
以前から製品に興味がありまして、チェーンなんかは使わせていただいていたのですが、今回とある方からホイールを貸していただけることとなりました。
そのお方は…
あのニセコで総合優勝を飾った我がチームのキャプテン!T崎さんです!!
そして、なんとこのホイールはニセコで優勝したホイールそのもの!!!なのです。
凄すぎます。
ニセコ優勝のホイールの現物を試すことができるなんて、もう一生ないと思います。
ありがとうございます!
今回は、私は正直インプレを書く予定はありませんでした。迷惑をおかけしてしまうかもと。
キャプテンから「率直な意見を書いてください!」と依頼を受けましたので、書いてしまいます!!
〜インプレ〜
身体測定。
まず、デザインです。
50mmハイトホイールはかっこいいですね。これは無条件に思います。
デザインもすっきりしていて好みです。カラーもオーダー可能ということなので、ポイント高いです。
ただしちょっと気になるのは、ホイールを回転させると、線の部分がゆらゆら揺らぐこと。
前輪は目に入ってしまうので、ホイールが振れてるみたいでちょっと気持ち悪いです。
イタリア産だと”味”になりますが、日本の製品だと”雑”って言われてしまうので、せっかくいいデザインなので詰めをもう一歩。
リムのプロファイルとしては、意外と平凡なものでした。
規定リム幅は約17mm、リムの外幅は約25mm、そこからリム面が膨らんで最大幅27〜28mm(すみません、私のノギスではちょっとちゃんと計れませんでした)で、リムハイトは50mm。
意外と平凡って言ったのは、規定リム幅のところで、もっと広いもんだと思っていました。最近のトレンドはこの幅がどんどん広がっていく傾向があり、最近は20mm近いものもそこそこ見かけるようになってきました。
リアはオフセットリムだったりしてこだわりが見えます。
リアホイールのオフセットは空気力学的に左右不均衡になって横風の影響とかどうなんだろう?と思いますが、きっとちゃんと考えられているのだと思います。
きちんとCFDで解析され、JAXSAの風洞で実験もしているようですので。
ホイールの組み方やハブの種類、スポークの種類なんかは詳しいブログが他にもいっぱいあるのでここでは触れないですが、私がお借りしたモデルは後ろホイールは左右同本組のハンフリーラジアルでした。
上位機種はストレートスポークの左右同数タンジェント組相当ですが、これは右側タンジェント、左側ラジアルの同数組、モデルチェンジ後は2:1組となっており、設計者の理想とするホイールの像がわかりません。
あと、空気抵抗の低さをアピールするのであれば、プロトタイプの時に風洞実験ができてれば、説得力があったのになと思います(これは製品としての性能ではなくて、開発姿勢としてです)。
この辺は、私の独り言です。
実測重量
GOKISOに慣れてしまうと「50mmリムハイトなのになんて軽いんだ!!??」となりますが、冷静に考えると、軽くはありません。
フロント734.5g(リムテープあり、バランスウェイトあり)
リア892.5g(リムテープ、バランスウェイトあり)
前後で1627g。リムテープ込みです。
リムテープはVittoriaのものがチョイスされていました。勉強になります。
走行感
以下の走行感はタイヤはBRIDGESTONE EXTENZA R1X(25mm)とMAXXIS フライウェイトチューブ(ブチル)を組み合わせて使用した時のものです。
また、フレームはCAAD10をメインに、時々SUPERSIX EVOを使用しています。
私が使用させていただいた距離は、レースを含め700km前後でしょうか。
多分総合的な戦闘力は高いホイールなんだと思います。
それは、T崎選手のニセコ総合優勝で十分すぎるほど証明されていると思います。
私が使いこなせないだけで。
走行感が重いか軽いかで言うと、私の体重(アンダー50kg)と非力さ(FTP200Wそこそこ)の場合、めっちゃ重いです。
漕ぎ出しも重いですし、加速も大変ですし、速度維持も結構気を使います。空気抵抗の低さからくる伸び感ですとか、脚を止めても減速しにくいとかって言った類の感覚は私は体感できませんでした。
重さに関しては慣れてしまえば「こんなもんかなー」と思ってしまうので、こんなもんなのかもしれないです。そういえば、途中から平坦メインやちょっとしたアップダウンでは気にならなくなりました。
ただし、急斜面の登りは明確に苦手です。
8%程度くらいまでならケイデンスを高く保つことで切り抜けられますが、それ以上になってしまうと後ろから引っ張られているような感触がペダリングの脈動の間に感じられてしまい、実際のホイール重量以上の重さを感じます。
客観的にいつもの山のタイムで比較しようと思いましたが、公表できるようなデータは取れず、傾向としてはあまりいい結果は出ませんでした。
このホイールは上りのみにフォーカスすると、あまり向いていないのかもしれないです。
登りに限らず漕いでいると全体で感じるもっさり感は、重量のせいなのか、組み方のせいなのかはわかりませんが、私には多分リムが重すぎるんだと思います。
んじゃ、もっと重いGOKISOなんてもっともっさりでしょ?って言われるのですが、案外GOKISOはもっさりとは感じないんです。
重いですが。
その辺は不思議です。
剛性に関してはよくわからないのですが、私が使う分には問題は全くありません。
縦剛性に関しては私には完全に必要以上でゴツゴツしちゃいますが、ゴツゴツに加えザラザラを伝えてくるアルミスポークアルミリムホイールよりは快適です。
フロントなんて、もう少しスポーク減らしちゃえばいいのにと思っちゃいました。そっちの方が空気抵抗の軽減をアピールできると思いますし、リム剛性が高いのであればそれほど転がりにも影響しないと思いますし、ハンドリングへの悪影響も限定的だと思うのですが、何かあるのでしょう。
リアのシュータッチは思ってたよりもしやすかったですが、逆に言うとこれはリム剛性が高い証拠とも言えなくもないです。
ハンドリングもリムの重さからか、どっしりとした印象であまり曲がりたがらない感じですが、それほど違和感が強いというわけではありませんでした。
エアロに関してはなんとも言えないです。
正直なところ、50mmホイールを複数持っているわけではないので比較ができないことと、45km/h以上の単独での平坦での巡行が〜とかを語るには私の実力が不足しすぎています。
下りでも伸びが気持ち良いというところまではいかなくとも、普通に速いなぁという感想でした。
横風に対しても、これくらいの影響は受けるだろうなという範囲で、受けないわけでもないですし、怖くて走れないというわけではないです。
怖くない、それこそが狙いかもしれないですが。
ブレーキに関しては、ノーマルブレーキシュー(アルミ用のブレーキシュー)が使用できることを売りにしていますが、これはちょっと気をつけたほうがいいかもしれないです。
ノーマルブレーキシューで使ってみましたが、トーインを強めに設定しないと音鳴りがひどくてとてもじゃないけどブレーキをかけられないことや、効きが唐突すぎる(コントロールが難しい)ので、SACRAさんから提供される専用シューやカーボンシューを使ったほうがいいのかもしれないです。
デュラエースのブレーキアーチですと、セッティング次第でそこそこ使用できる感じでしたが、KCNCのブレーキアーチではアーチ剛性が不足していて、とてもじゃないですが、使用をお勧めできる感じではありませんでした。
また、高温時に急にシューが崩壊するような感触があり(当て効きを続けているような状態ではなく、一気に短時間に速度を落とすような状況(例えば予想外の飛び出しに対して急ブレーキをかけたような時)で)、実際に条件が揃うと一気にシューの磨耗が進みます。
これは、SHIMANOのR55C4(最もスタンダードなアルミリム用シュー)を乗鞍の下山時に使ったものですが、畳平から3本滝まで1本でこれだけダストが成長してしまいました。
ホイールを外して撮影するとこんな感じです。
これでもリムは全く問題ないので、リムは確かにかなり頑丈です。
ただし、かなり高温になっているであろうことが予想されるので、チューブに与える影響は心配ではあります(バーストは経験しませんでした)。
雨天時は試していないのでわかりません。
総評
13万6千円と言う価格は絶妙なところで、大手メーカーアルミリムの最上級グレードとかぶりますし、大手メーカーのエントリーグレードのカーボンホイールよりは少し安く、中華カーボンと言われるホイール達よりは高価です。
私が(高価な)ホイールを買うときは、
「このホイールを使えば速く走れるかもしれない」
という夢を買うか、
「このホイールの構造は、このホイールでしか採用されていない」
もしくは
「このホイールでしか味わえない性能がある」
という基準で買います。
T崎さんがニセコで勝ったという事実から、夢に関しては十分です。
また、このホイールでエンデューロレースでクラス優勝することもできました。
あとの二つはこのホイールでは当てはまりません。
正直、ホイールの性能差はある一定以上のレベルになると、よくわからないです。
性能的には重さは感じるけど、それ以外には取り立てて欠点は見当たりません。※ブレーキングの熱(シューの磨耗)については注意が必要ですがこれはこのホイール特有ではなく、カーボン(クリンチャー)だと必ずついてくる問題です。
リム剛性の高さと、クリンチャーの転がり抵抗の低さ、ハイトが高いことによる空気抵抗の低さは、武器になる場面も多いと思います。
予算の範囲内で見た目が気に入れば、購入を検討して良いホイールかなと思います。
UCIで認証も取れたようですので、安心して実業団レース等でも使用できます。
また、保障制度が充実していることも安心につながります。
ありふれた構造で、剛性と空気抵抗というエンドユーザーからすると非常に客観的評価が難しい性能をアピールするこのホイールは、あえて選ばなければいけない理由を説明することが困難なホイールだとも言えます。
SACRAさんはツイッターやホームページのコラムを見ていると、かなり合理的に効果の薄いものを切り捨てて、効果の高いもののみを取り入れた製品作りをしているように私は感じます。
確かに、内装ニップルにしても空気抵抗値は変化しないのかもしれない、軽い事はそれほど重要ではないのかもしれない。ハブやスポーキングなんて何でも良いのかもしれない。
でも、大差ないことでも差が少しでもあるならば、そこにこだわりのある製品を使いたいと思ってしまうのが私の悪い癖です。
変なこだわりは性能を悪化させたり、製品としての完成度を落としたりもしますが、それ自体が魅力となってしまう変な面もあります。
SACRAさんのホイールは合理的なのかもしれないですが、「何にこだわったんだろう?設計者が理想としたホイールはどういったものだったんだろう?」というのが私の製品を見た素直な感想です。
良い製品ってだけじゃ物足りない。
そこが製品作りの難しいところなんだろうなと思います。
最後にこのような機会を与えてくださいまして、本当に有難うございました!
すごく勉強になりましたし、楽しく、また光栄でした!!
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント