はじめに
以前上げた記事、GOKSIOホイールを使用すると上り坂でタイムを縮めることができるのか〜Lightweightとの比較〜(速報板)、大きな反響をいただきました。
と同時に、試験方法について大きな問題があることも事実であり、追加試験を行いGOKISOホイールを使用すると上り坂でタイムを縮めることができるのか〜Lightweightとの比較 〜(追加試験編)でGOKISOの主張する優位性に疑問が生まれました。
この二つの検証を行い、どちらも私が考えられうるベストの条件で比較することが必要だと考え、今回の検証を行いました。
今回の試験を行った結果、私の中で現時点での一つの結論を出すことができたのでは、と、思います。
比較方法
使用コース:
比較に使用するコースは、新潟ヒルクライムの2014年度のコースの一部を使用します。
スタート位置は残り5km地点、
ゴールは残り2km地点(6号目看板)までを使用します。
タイヤによる距離の計測、気圧高度計による測定となりますので、若干の誤差を含んでいるものと思いますが、
距離:3.00km
標高差:243.6m
です。
途中、斜度の若干の変化はありますが、平坦や下の区間は一切ない、登りっぱなしのコースです。路面はドライでした。
タイムの測定は、それぞれスタート、ゴール地点で明確に分かる線(新潟ヒルクライム時にペイントされていた線)を基準とし、その線をフロントタイヤが踏んだ瞬間を、ライダー(私)自身がLapボタンを押すことにより計測されます。
GPSオートラップは使用しておりません。
白線を参考に、白線から10〜50cmの位置を走行するよう心がけ、可能な限り、走行距離に誤差がないようにしました。
計測する項目
今回は、出力を一定とした際のタイム比較として行いました。
タイム、および出力のみを計測し、平均出力:200W(190〜210Wの間で調整するよう心がける)としました。
これは、私が複数回安定して登れる出力かつ、パワーウェイトレシオで4.0kg/w程度となる数値です。
また、走行本数は6本としました。
1本目GOKISO、2本目と3本目Lightweight、4本目と5本目GOKISO、6本目Lightweightとしました。
使用機材
フレームはCAAD10(2012モデル)を使用し、メインコンポーネントは105。
チェーンリング、スプロケット、チェーンは同様のものを使用、駆動ロスによる誤差を防ぐため、チェーンはインナー・ローで固定、変速は行いません。
パワーメーターはPOWER2MAX TYPE Sを使用。
毎回のテスト前にキャリブレーションを行いました。
ホイールとタイヤ
今回の検証では条件をより絞るために、フロントホイールは交換せずに、リアホイールのみ交換して試験を行うこととしました。これにより、交換時間の短縮を図り、走行本数を増やすことを目的としています。
GOKISO
ロードハブ、前後30mmワイドクリンチャー2014モデル、約5ヶ月日常的に使用
タイヤ:前ミシュランPRO4 SC 前25mm
後コンチネンタルGPスーパー ソニック23mm
チューブ:前MAXXIS FLY WEIGHT 後SOYOラテックス
※空気圧はF/R 7.4bar/8.0bar
リアホイールスプロケット込み重量(クイック含まず):1480.0g
Lightweight
Ventoux190(2011モデル)
タイヤ:後Veloflex Record 22mm
接着方法:リムセメント(貼り付けはショップに依頼)
※空気圧はR 9.4bar
リアホイールスプロケット込み重量(クイック含まず):987.5g
空気圧は同様のゲージを使用し、設定。
両者のリアホイールの条件は、今私がヒルクライムレースで仕様するとしたらという前提で、私の考えるベストな組み合わせを選んだつもりです。
比較した条件および重量
①GOKISOホイールを装着した状態
車体重量8.7kg、ライダー体重52.0kg
②Lightweightホイールを装着した状態(機材の重量調整なし)
車体重量8.2kg、ライダー体重52.0kg
※ライダー重量は装備類を着用した状態での計量。また、走行時の脱水の影響と思われる体重減少を補うために、バックポケットにボトルおよび工具を入れて、体重が変化しないよう配慮しました。
結果
結果を表にしてまとめました。
全体の平均
GOKISOのみの平均
Lightweightのみの平均
サンプル数が不足していますが、平均値の差の検定で、GOKISOとLightweightのタイムはP>0.1、出力はP>0.1と有意な差は認めらないという結果が出ました。
考察と感想
今回は、Lightweightの方がタイムがいい傾向にありますが、GOKISOの最速タイムとLightweghtの最遅タイムがでは、GOKISOの方が良く、統計学的には(決して正しく検証できているとは言えませんが)差がないとの結果を得ました。
やはり、パワーメーターの誤差が大きく、ほぼ同じ出力にもかかわらず、タイムが大きく変動しています。特に、5本目と6本目の結果が他のものから大きく離れている傾向にあり、キャリブレーション値が1〜4本目の検証と明らかにずれていたため、なんらかのパワーメーターの誤差が入り込んだ可能性もあります。
結果で得られた数値を取捨選択することは好ましくないのですが、5本目と6本目を除いて検証もしてみましたが、同様に差は認めないという結果が出ました。
ホイールを変えながら複数回試験を行いましたので、風の影響もある程度実験結果の誤差から排除できているのではないかと思います。
差はないとはいえ、Lightweightの方にタイムがいい傾向にあることは確かです。
ここで、ヒルクライム計算を使用し、数値の妥当性を検証します。
使用する数値は、各群の平均値を使用します。
まずは、GOKISO群です。
平均で得られた結果を入力すると必要な出力は196Wと、実測値よりも約4W低く出ています。※目標タイムは表示枠の大きさの関係で全て表示されていませんが、13.87分と入力しました。
転がり抵抗係数のみが変化する要因と仮定し、その数値を変化させると、
転がり抵抗値0.007で必要な出力が200Wとなります。
続いて、Lightweight群の数値を入力します。
転がり抵抗係数0.005にて平均出力200Wと出ました。
機材で500gの差があり、それがタイムに影響していることは間違いありません。
それでは、GOKISOと同じタイムで走った場合、必要な機材重量は
9.9kgと+1.7kgです。
極端な数値のように見えます。これほど差がつくようには思えないと自分でも思うのですが、実は今回結果に表示していない数値があり、それが非常に整合性の取れる数値となっております。
結果に載せなかった理由は、1本のみなので、数値としての信頼性がないからですが、考察材料としては使用できると考えますので、ここに記します。
山頂での撮影のために、撮影機材を担いだリュックを背負って1本だけ計測しました。
リュックを含む体重は53.4kg、その際のタイムは13分46秒、平均出力は199.8Wでした。
これを入力します。
計算上と非常に近い結果が出ており、+1.4kgの総重量において、GOKISOの平均よりもタイムは良く、Lightweightの平均よりもタイムは遅いという結果になりました。
ここから何が考察できるかというと、リアタイヤ単体においてすら、GOKISOよりもLightweightの方が転がり抵抗が低い(小さい)可能性があるということです。
転がり抵抗係数以外に、空気抵抗係数がLightweightの方が優れていた可能性も残っていますが、リムハイトはGOKISOの方が高く、スポーク数は一緒です。そして、今回は空力的に非常に重要な前輪は両群の検証において同じものを使用していますので、決定的な要因ではないと思います。
参考に、タイヤを装着した状態での断面形状をトレースしたもの(型取りを行い、それをトレース)の画像を添付します。
※型取りの際の変形とトレースの不正確性(右利きなので右サイドのトレースが苦手)から、あまり制度は高くないですので、参考程度にお願いします(謎)。
これは、私にとって非常に衝撃を受ける結果であるとともに、一つの結論を与えました。
それは、少なくとも登りにおいては、GOKISOにパンクブレーカーすら入っていないスペシャルタイヤを履かせ、ラテックスチューブを入れた転がり抵抗を軽減させるには最適と思われる組み合わせを取り入れるより、チューブラーのTT用の軽量タイヤを高圧で使った方が、タイムを縮められる可能性が高いという結論です。
荷物を担いでの計測や、計算上の検証でも示される通り、それはGOKISOホールは重りとして使用したとしても、不利になる可能性があるということです。
GOKISOの方が転がり抵抗が大きくなってしまった要因の一番大きなものは、空気圧にあるのではないかと思います。
Velofrex Recordの最高空気圧は10barで、今回は安全面を考え、それよりも低い9.4barに設定しました。
対して、GONTINENTAL GP SUPERSONICの推奨空気圧は8〜10barですが、GOKISOのリムが8barまでを推奨のため、8barでの検証となりました。
個人的な意見なのですが、8barまでが指定のリムに、8barの空気圧をかけることは、ブレーキや路面の熱、高度差による大気圧変化からくる相対的な内圧の変化を考慮すると、あまり気持ちいいものではありません。
1.4barですが、これが転がり抵抗係数の差の要因となったのだと思います。
ただ、注意しなければいけないのは、平均の数値では差はありますが、統計学的には差がなく、実際にタイムがクロスしている検証回があるということです。
なので、勝敗を左右する決定的な要因になるほどではないという可能性があります。
また、初回の検証で示す通り、タイヤによっては逆転することもあり得るということです。
GOKISOでは、試験機を使ってのデータを取っていることと思いますので、この結果におそらく納得はできないと思います。
ですが、私が試験機ではなく実走でのテストにこだわったのは理由があります。
人間はモーターではありません。また、極端に強い加重もかかりません。
時速100kmで何時間も山を登ることはできません。
非常な小さな出力ですが、ペダリングにより、トルクが脈動し、加重がかかる瞬間と抜ける瞬間があり、それにより蛇行しながら自転車は進みます。
これを試験機で再現することや、シミュレーションで導き出すことは現在ではまだ困難だと思います。
実際に路面を走らなきゃわからない。そこを重視する必要があると思います。
実走でのテストは、本数が稼げなかったり、誤差が入り込む要因が大きかったり、実験としての信頼性自体は落ちます。
ですが、試験機では決してわからない結果が(信頼性は低いですが)得られます。
最後に(これからの課題とGOKISOさんへの要望も)
今回で、GOKISOは重量が軽かったとしても、チューブラーに勝てない可能性があることを示せたと思います。
これは、ハブの問題というよりも、タイヤの問題である可能性が高く、残酷ですがハブの影響は、タイヤや重量を超えないというものであると思います。
限定された条件下ではありますので、クリンチャータイヤ+太いタイヤ+低圧の方が転がり抵抗係数を軽減できる条件というものは必ず存在すると思いますが、私の場合、路面の比較的クリーンなヒルクライムではその限りではないということです。
最終的な結論を出すためには、やはり前後をそれぞれで統一した仕様で、全開の走りでの検証をする必要はあると思います。
じてトレさんの記事で、「軽量な機材と重い機材を使用し、パワーメーターを使用して一定ペースで走った際と、パワーメーターを見ずに走った場合だと、パワーメーターを見ない方が両者のタイム差が大きかった」という検証もあり、避けては通れない検証であると思います。
私自身はGOKISOホイールを非常に気に入っており、独特の乗り心地は他のどんなホイールとも違います。
また、ヒルクライムレースで決定的な差が生まれるわけではありません。
今の日本の(自転車)製品では珍しく、唯一無二の存在であることは確かです。
また、比較的斜度が緩かったり、路面が極端に荒れたレースでは、GOKISOを投入してもいいなと思っていることも事実です。
だからこそ、GOKISOさんにはより一層の改良を目指して欲しいです。
この回転性能を保ったままの軽量化(クライマーハブを超える)。
軽量化つ高い剛性、空力性能を持ったチューブラーリムタイプのホイール。
クリンチャーリムの高圧への対応と軽量化、空力性能の向上。
これが必要ではないかと、失礼ながら思ってしまいます。
今持っているGOKISOホイールのリムをENVEのクリンチャーリムで組み直す計画もありますが、今回の検証を受けて中止としました。
リム重量が400g付近、10bar程度まで耐えられ、ワイドかつ空力的にも優れるものが登場するまでは待ちたいと思っています。
そうすると、また面白い検証ができるのではと思っています。
全力での比較は、私のコンディションが整い次第行います。おそらく秋ころになるのではないかと思います。
検証を行いましたら、報告します。
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