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私には真実はわかりませんが2

”2”と題名にありますが、1も3もありません。

感のいい方は題名で「ピーン」と来るかもしれません。

この記事を書く発端となったのは、新進気鋭の最近話題になっているホイールメーカーのとあるコラムの一文です。

直接リンクを貼るのは少し心が引けますので、

ホイールの真実2

で検索していただけるとヒットするかと思います。

そこにある一文。

「答えは簡単、ワイヤー2本で支えた方が剛性が2倍高くなります。」(原文のまま引用)

この一文がものすごく引っかかりました。

言いたいことはわからないでもないのですが、ワイヤー2本で支えたら剛性が2倍っていうのはちょっと意味がわからないなと。

それを自分の中で咀嚼して、あぁ!そういうことだったのか!という過程を記事にしてみたいなと思いました。

ースポークをバネとして捉えるー

テンション構造の自転車のホイールの場合、ステインレススチールスポークを使用することが多いです。

ステインレススチールはバネの材料にもなりますし、実際に力をかけて伸び縮みさせますので、この記事では、スポークをバネとして考えることにしました。

Sp01_3

Mという重り(荷重)を吊るすと1cm伸びるバネを想像します。

この時、バネはMという力の大きさで引っ張ることによって、重りと釣り合っています。

Sp02_2

ここで、赤い突っ張り棒を用意して、1cm伸びた状態で固定できる状態にします。

この赤い棒は全く変形しない、しかも重さのないものだと仮定します。

この状態でもバネはMという力で引っ張り続けていますが、棒がその力に逆らっているので、バネは縮むことなく力は釣り合っています。

この状態では、バネにかかっている力は右のMの重りが吊るされている状態と全く変わりません。

が、実際には重りは吊るされていません。

テンション(引っ張る力)がつっかえ棒にM分掛かっている状態です。

Sp03_2

ここに、さらにMを吊るしてみます。

ここでも左側の図には変化がありません。

バネが引っ張っている力はMのままです。

が、よく見ると違いがあります。

棒にかかっていた力がなくなっています。

棒によって支えられたたバネの力が重りの荷重によって相殺されました。

ここでさらに重りを加えてみます。

Sp04_2

2倍の重さを持つ2Mと言う重りを吊るすと、バネはさらに1cmのびてしまい、つっかえ棒は落ちてしまいます。

考え方を変えます。

1cm伸ばした状態でつっかえ棒で固定されている状態ですと、Mの荷重までは見た目では全く変化が生じません。

ある一定の力がかかるまで変形しない状態を、テンション構造では作ることができます。

もちろん、その一定の力を越えれば、バネの伸び率に従った変形をします。

ですが…、これでは2倍の意味がわかりません。

モデル図を変えて考えてみます。

ーヒンジ付き棚とスプリングで考えるー

※実際には角度を持った運動なので以下に記すようにはならないのですが、簡略化して概念として理解するためにこのような表現にしました。

Sp05_2

おや、どこかで見たことありそうな図になりました。

左の壁に、緑の全くたわなく重さもない棚がヒンジによって摩擦なく自由に蝶番運動できるように固定されています。

図のようにバネでその姿勢を保っています。

左側は、荷重がかかっていない状態です。

これにMと言う重りをつるします。

すると、バネはmと言う力引っ張ることで1cm下に動いたところでバランスがとれました。

Sp06_2

ここで左のように、水平にした時にバネがmと言う力を発揮できるように調整して取り付けます。

ですが、バネはもちろん縮みますので、抑えるものがなければ、上に1cm棚が上がってしまいます。

Sp07_2

下に赤い紐を取り付け、釣り合いをとります。

この紐は非常に柔軟性が高く自由に曲がりますが、引っ張ってもまったく伸びないという素材です。

左側の図では、紐がmと言うちからで引っ張ることにより、棚の水平が保たれています。

ここにMを吊るしてみますが、棚の水平は保たれたままです。

その代わり、紐にかかっていた力がゼロになります。

Sp08_2

その状態で、棚を1cm下に下げるためにはどうしたらいいかと考えると、2倍の重りを吊るせばいいことになります。

2倍の重りをつるして変形量はテンションをかけてない時と一緒!?

これが下に紐を足すと剛性が2倍!

の意味なのでしょうか。

どうもしっくりきません。

このモデルの場合、Mより小さい荷重であれば全く棚は動かずに、Mを超えた瞬間からはこのバネの本来の伸びに従って変形します。

なので、2Mを加えたときにたまたま2倍になっただけです。

これでは、剛性が2倍とは言えないです。

2倍の力をかけた時の剛性がたまたま2倍になっただけです。

図B-3で明らかにおかしかったのは、全く伸びない紐です。

実際のホイールでは、スポークで釣り合いを取りますので、上下ともにバネでなければいけないはずです。

Sp09_2

この図の左のように、同じバネを上下に装着し、上下のバネともにmと言う力でテンションをかけて棚が水平を保つことができるようにします。

右の図のようにMを吊るした場合、下のバネのテンションがなくなり(かかっていた力がなくなり)、その状態で水平を保つことはできません。

これが、全く伸びない紐と大きな違いです。

Sp10_2

確かに、上のバネだけであればMと釣り合いが取れそうです。ですが、その状態でも下のバネは縮もうと力を出し続けています。

つまり、上のバネと重りが釣り合いを取ってしまったら、その分下のバネによって引っ張られて棚は動いてしまいます。

この時、どれくらい動くかが問題になります。

ここで、この図だと私の頭がパンクしそうなので、壁をぶった切って、上のスプリングが付いてる方を天井に、下のスプリングが付いている方を地面に見立てて開いた図にしてみます。

すべての力の要素を一直線にすることで、私の頭を整理します。

Sp11_2

一番左の図はバネが天井から吊るされ、また床から生えている、全く力がかかっていない模式図です。

真ん中は、上下のバネをつないでmと言うちからで釣り合いが取れた状態だとします。

この時に、考えやすくするように、単純に伸びを1cmにしました。

一番右の図は、下のバネをつながずに、このバネを1cmのばすことに必要な重さ、mを吊るした状態にします。

上のバネだけを見ると、真ん中の図と右の図は、同じ状態です。

ここにしたのスプリングを接続すると考えます。

Sp12

バネと重りの違うところは、バネは伸びることによりエネルギーを発生しますので、戻ってしまえば力がなくなります。

重りはずっと一定の力をかけ続けます。

上のバネは下のバネによって引っ張られて伸びますが、下のバネは上のバネを引っ張った分だけ縮みます。

そして、縮んだ分だけ下のバネは引っ張る力が減少します。

伸びと縮みで上下のバネでバランスを取りますので、同じバネの場合、それぞれが同じ分だけ伸びて、バランスが取れますので、0.5cm下に下がった状態でバランスが取れます。

本来、このバネはmと言う力をかけると1cm伸びるはずです。

が、図B-7の真ん中のようにテンションをかけて釣り合わせた状態でmという重りを乗せると(図B-8の右側の状態)、同じmという重りをつるしているにもかかわらず、緑の棚が下に動く量が半分になります。

2倍の面影が見えて気がします。

ここで、もう一度ヒンジ付きの棚の絵に戻して考えます。

Sp13_2

こんな感じになります。

2Mという重りを吊るすまでの間は2倍といって良さそうに見えます。

ただし、2Mを超えてしまうと、下のバネとの力のやり取りではなくなり、単純に重りが上のバネのみによって支えられる状態になりますので、もとのバネ1本で上から吊るされていた状態と変わらなくなってしまいます。

ーグラフで考えてみますー

かなり2倍の謎に近づけた気がしますが、どうもまだすっきりしません。

グラフにして考えてみました。

Sp15

横軸に変形量、縦軸に荷重と設定しました。

変形しにくい(剛性が高い)ほど、グラフが急になります。

図B群の変形の仕方はこんな感じになります。

スポークテンションが掛かっている場合、スポークテンション内であれば傾きが2倍になります。

ですが、スポークテンションを超えてしまうと、スポークテンションゼロと同じ傾きになります。

これでわかりました。

「答えは簡単、ワイヤー2本で支えた方が剛性が2倍高くなります。」

の真意は、”剛性が”の後に(あの図において)上下のワイヤーの角度が同じで、さらにはワイヤーが同じ特性で、さらにさらにはワイヤーに掛かっているテンションと釣り合う荷重範囲内であれば2倍という意味でした。

すっきりしました。

赤字の部分が省略されていたのですね。

確かに分かってる人には必要なさそうな説明です。

あと、あの図での違和感は、ワイヤーが伸びない構造になっていることでした。

伸びないものでは、確かに荷重のやり取りがああいった様相になりますが、実際にはスポークは弾性素材ですので、私の中に違和感が生じたわけです。

このグラフを見ると、スポークテンションを上げると確かに2倍である領域は大きくなります。が、スポークテンションを上げたところでもとのスポークの2倍以上にはなりません。

ただただその領域が増えるだけです。

さて、ここで図A群についても、グラフにしてみたいと思います。

Sp14_2 

グラフBとは様相が違います。

スポークテンション内の荷重であれば、全く変形していません。

ですが、スポークテンションを越えれば、やはりスポークのヤング率に従った変形になります。

スポークテンション内であれば全く変形しないというのは、重要です。

つまり、スポークテンションを高くすれば高くするほど、変形しない領域を大きくすることができます。

 

ーホイールに置き換えて考えてみるー

これで2倍の謎が解けてスッキリしましたので、ちょっと脱線して、ホイールに当てはめて考えてみたいと思います。

実はA群はホイールの縦剛性を考えて作った図です。

つっかえ棒で表したのはリムです。

ホイールを上から潰すような力をかけた場合、リムはスポークに対して非常に変形しにくいという前提ですと、グラフAに近い挙動を示すと思います。

ちょっと表現がわかりにくかったです。

リム剛性が高ければグラフAに近い挙動を示すと思います。

ホイールの縦剛性には(リム剛性が十分に高い場合)スポークテンションを上げる効果が絶大だということに気づきます。

たとえ、スポークそれ自体のヤング率が低くても、テンションを十分にかけることができれば、そのテンション内の荷重であれば変形しないのですから。

ただ、テンション以上の荷重がかかると想定するのであれば、当然スポーク自体のヤング率を高くしておく必要があります。

縦剛性はホイールの真円を保つ能力ですので、転がり抵抗に大きく影響します。

このことから、転がり抵抗をホイール側で減らそうと思ったら、高い剛性とスポークテンションを高めることが重要そうだと妄想します。

B群は横剛性や駆動剛性を考えて作った図です。

のむラボさんが「横方向はスポークテンションが剛性に寄与する割合が少ない」といった意味がわかったような気がします。

テンションを貼れば、(上の模式図の場合)2倍の領域が増えますが、テンションが有効に働く荷重内でも2倍です。

つまり、テンション範囲内で剛性が不足している場合、どんだけテンションをかけていったとしても、不足したままになります。

なので、「横方向や駆動方向はスポーク数やスポークの太さ、素材、角度が大きな要素を占めてくる」というのが理解できた気がします。

そして、テンション不足だとあるところから突然変形しやすくなるってこともよくわかります。

実際には、もっと複雑な様相を示すのだと思いますが、少しだけテンション構造が理解できたような気がします。

ートラコンプ構造ー

Sp07_3

この図を書いていた時に、下の赤い紐みたいな素材、そしてさらには下の紐が紐じゃなくて、棒だったらいいのになと思ったのですが、そんなホイールありましたね。

MAVICのR-SYS後輪です。

上のスプリングはアルミスポーク、下の赤いものはカーボンスポークです。

R-SYSのカーボンスポークはアルミスポークに比べれば、伸びないも同然です。

なので、この図に近い状態が起こりうると考えます。

引っ張ってる力が存在するのに、伸びてない。

ということで、その力が解放されてもほぼ変形しないということは、カーボンスポークのテンションが解放されるような力がかかったとしても、そこまではほぼ変形していません。

しかも、その先は微力ながらカーボンが支えになってくれます。

R-SYSの横剛性が異常に高いのは、そういう理由だと考えます。

ただ、カーボンスポークが突っ張ってたとしても、それ以上にアルミスポークが伸びるような力がかかってしまえば、その分変形してしまいます。

じゃぁ、両方カーボンスポークで作ってしまえばいいのにと思いますが、本当にそう思います。

そうすれば、駆動剛性も凄いホイールができるのではないかと思います。

コンプレッションホイールはここでは触れませんが、コンプレッションホイールの弱点は変形をしない限り力を受け止められないところです。

といったところですが…、

話がそれすぎましたし、長くなりすぎたのでこの辺で今日はこの辺で終わりにしたいと思います。

最後にですが、リム剛性は高ければ高いほどやはり良さそうです。

GOKISOも頑なにリム剛性にこだわります。

そういった意味で、SACRAさんのリムには大いに興味を持ちました。

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